adres (Automatic Dynamic Range Expansion System) Technology

ノイズリダクションシステム伝説



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R1.3
序 章
今やオーディオメディアはCDやMDの光ディスクが主流ですが、CDが一般に登場する1982年10月1日以前は、音楽といえばアナログレコードであり、我々が自由に録音再生できるメディアは磁気テープだけでした。
かつて磁気テープと言えば、大がかりなオープンリールテープで、自分でテープをリールにセットし、ヘッドにテープを通して・・・・という準備が必要でした。(写真右はTEAC製X-2000)
TEAC X-2000 オープンリールテープデッキ
このオープンリールテープの使い勝手を改善し、コンパクトなプラスチックケースに収めたのがコンパクトカセットテープ(今、我々がカセットテープと呼んでいるもの)です。
コンパクトカセットテープは、1965年オランダ・フィリップス社が互換性の厳守を条件に、製造パテントを全世界に無償公開、翌年から市場に出回った経緯があります。
このコンパクトカセットテープ、カセットデッキにポンと放り込むだけで使えるため、使い勝手はオープンリールテープよりずっと便利なのですが、如何せんテープ幅もテープ速度も劣り、会話録音ならまだしも、音楽用途にはまだまだ力不足のものでした。
その後、テープ素材やカセットデッキの技術向上、普及に伴う需要の増大で、コンパクトカセットテープは軌道に乗り、1979年にソニーからウォークマンが登場するに至って、コンパクトカセットテープはオーディオメディアの主流となっていくのでした
コンパクトカセットテープは次第にオープンリールテープを圧倒していくのですが、どうしてもオープンリールテープを越えることのできない部分がありました。
それは、小さな音から大きな音までどれぐらい広く信号を記録できるかという、ダイナミックレンジの差でした。細かな改良を積み重ねていったコンパクトカセットテープも、テープスピードとテープ幅という、物理的な制約には勝てなかったのです。
単純に単位時間当たりの記録密度を比較すると、コンパクトカセットテープはオープンリールテープの数十分の一しかないのですから。
また、磁気テープから発生する原理的なノイズも、音楽マニアにとって悩みの種でした。
このノイズはヒスノイズと呼ばれ、無音状態でも再生中に「サー」っという音が聞こえるアレです。
これは磁気テープにアナログ記録する以上、不可避な問題でした。
ドルビーロゴ
カセットデッキでおなじみの
ドルビーロゴマーク
そこでメーカー各社は、ダイナミックレンジ拡大とノイズ低減を目指して、1970年代後半にノイズリダクションシステムと呼ばれる技術を競って開発・投入していきます。
現在、最も有名なノイズリダクションシステムは、イギリス・ドルビー研究所が開発したドルビー(DOLBY)でしょう。カセットデッキは当然のこと、ラジカセやヘッドフォンステレオ、カーオーディオにもドルビーは常識にように対応しています。尤も、最近のMD世代の人にとって、ドルビーといえば映画館やDVDでお馴染みのドルビーサラウンドでしょうが・・・。
ノイズリダクションシステムは、最終的にドルビーC方式が勝ち残るまで、熱い戦いが繰り広げられました。
中にはドルビーより評判は良かったものの、メジャーになれず消え去ったシステムもありました
今ではコンパクトカセットテープそのものが衰退し、過去のものとなりつつありますが、その歴史の名脇役・ノイズリダクションシステムを記憶の彼方へと消し去ることなく、将来に渡ってスポットライトを当てていこうというのが、このノイズリダクションシステム伝説です。
当サイトでは、国産ノイズリダクションシステムの中で最も普及し、根強いファンを持つAurex(東芝)のadres(アドレス)に注力していきます。
adresを語る上で、他のノイズリダクションシステムを避けて通ることはできませんので、合わせてご紹介します。
残念なことに、現存する資料や情報が限られるため、間違いがあるかもしれません。
お気付きになられましたら是非ご一報下さい。


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