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R1.2
第二章 adresの動作原理

adresは圧縮伸張方式とエンファシス方式を組み合わせたハイブリッド型です。
圧縮伸張方式に高域エンファシスを併用し、エンファシス量を変化させる"可変エンファシス"がadresの特徴です。



アドレス回路を通る信号のうち、ノイズがあまり気にならない低域信号は、そのまま1:1.5圧縮を行います。





高域では、二段階のプロセス(エンファシス処理→圧縮プロセス)となります。
高域信号のエンファシス量は、小音量時は多めに、大音量時はゼロと可変しているのが特徴です。




それでは、まず高域信号処理のブロックダイヤグラムから見ていきましょう。(Fig-1)


Fig-1 adres 高域信号処理ブロックダイヤグラム


(1)入力信号は、まずVRA(Variable Response Amplifier)に入ります。
このVRAがadresの心臓部と言っても過言ではないでしょう。
VRAはVCA(Voltage Controlled Amplifier)とHPF(High Pass Filter)で構成されています。
入力信号が小さいときは、VCAのゲイン(増幅度)が大きくなって周波数特性はフラットになり、入力信号が大きくなるにつれてVCAのゲインが下がり、HPFの効果が高まって高域周波数が減少する特性となります。(Fig-2)


Fig-2 VRA特性グラフ


(2)次にプリエンファシス回路に入ります。ドルビー方式同様、adresでもエンコード時に高域を持ち上げ、デコード時に高域を抑えることで高域ノイズを小さくしますが、adresでは入力レベルが小さいときはエンファシス量を大きく、入力レベルが大きいときはエンファシス量を小さくする"可変エンファシス"方式を採用しています。
この可変量は、前段のVRAと組み合わせて0dB(大入力時)から+18dB(最小レベル入力時)まで自動的に調整されます。総合エンファシス特性は以下の通りです。(Fig-3)


Fig-3 総合エンファシス特性


(3)エンファシスによる高域飽和現象を防止するため、プリエンファシス回路とは別に設けられたのがこのウェイティング回路です。レベルセンサの高域感度を高める補正特性となっています。(Fig-4)


Fig-4 ウェイティング特性


(4)入力信号レベルを検出するのが、実効値検出を採用したレベルセンサーです。入力信号を対数圧縮し、両波整流した信号を係数器とAnti-Logダイオードで積分した後、逆数の係数器を通してレベル信号を作ります。このレベル信号でVCAをコントロールします。
この実効値検出のメリットは、一般の楽音に含まれる高次高調波成分の変動や、デッキ・テープの高域特性の劣化や位相変化による影響を受けないことが挙げられます。
なお、レベルセンサーの反応速度が単に速いだけでは、音楽のレベル変動に常に振り回され、背後で変動しているノイズ(ブリージングノイズ)が聞こえてしまいます。ノイズの主信号(音楽)に対するマスキング効果のためにも、速い立ち上がり時間(Fast Attack Time)と緩やかな立ち下がり特性(Slow Decay)が求められます。
そこでadresでは、人間の心理効果をも考慮して時定数(反応速度)を決めています。


(5)前出の総合エンファシス特性(Fig-3)で、VCAのゲインが0dBに近くなると、周波数特性の変化が大きくなるため、録音・再生のレベル合わせが厳密となってきます。そこでレベル信号をソフトリミット回路により高レベル時のレベル信号変化を少なくし、録再時のレベル誤差に対する感度を下げて余裕を持たせるのがリミッター回路の役割です。±2dB程度の誤差であれば吸収可能となっています。

このようにして、adresでは高域可聴ノイズの低減を行っています。
続いて、ダイナミックレンジ拡大のための圧縮プロセスです。
入出力特性は以下の通りです。(Fig-5)


Fig-5 入出力特性


低入力レベルではデシベル換算で約1.5次の圧縮を行い、高入力レベルでは約1次の圧縮を行っています。
例えば-40dBの入力信号は、約-26dB(40dB/1.5)に持ち上げてテープに記録され、再生時には-26dBの信号が-40dBにデコードされて出力されます。
一方、0dB以上の高入力レベルでは、逆に2〜4dB程度圧縮してテープに記録します。これにより、見かけ上のクリッピングレベルが上がるため、テープのダイナミックレンジが広がるのと同等の効果があります。

圧縮伸張・エンファシス・ディエンファシスプロセスは、全くの対称特性となっているため、adresでエンコード・デコードした結果、音楽信号は同一で、ダイナミックレンジは拡大し、SN比は向上することになります。

この次では、実際にadresの効果を、測定データを交えて見てみましょう。
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