EXCELIA(AIWA) XK-009 レポート

Last Update : 2002/11/07






予告編(2002/10/17)

レポート開始を見計らったかのように、ウチの009はゴムベルトがダメになりました。(^^;
折角なので、修理レポートも追加します。(笑)

さて、この世に名機は数多くあれど、カセットデッキでベストな物を選べと言われたら、私は迷わずXK-009を選びます。
そりゃ中にはTEACの弩級デッキZ-7000(\298,000)や、実にスマートで今でも見劣りしないソニーのTC-K777シリーズ(\148,000〜168,000)、ナカミチ信者じゃなくてもDRAGON(\260,000)や1000ZXL(\550,000)を挙げる人もいるでしょう。私だって、タダでくれるというなら、喜んで引き取りますよ。(ぉぃ)
しかしですよ、お金さえ掛ければ、そりゃ何だってすごいマシンを作れますよ。
私が009を推す理由は、音質に影響する部分に重点投資し、定価\99,800で超高級デッキに匹敵する性能を叩き出した点にあります。
今の20代以下の人にとっては、アイワは安物ブランドのaiwaであって、AIWAでもなければEXCELIAでもありません。尤も、今ではそのaiwaもなくなってしまいましたが。(涙)
でも30代以上なら、アイワのかつての実力をご存じのはず。駄作も多いけど(^^;、"カセットデッキのアイワ"として、その名を馳せたことは事実です。
そこで今回は、名機009を取り上げてみようと思います(ただし修理が終わってからね。くっそー、何でこのタイミングでベルトが・・・・ さてはソニーの陰謀か!?ヾ(^^; ぉぃぉぃ)。


!!重大ニュース!!(2002/10/21)

今日、アイワのサービスマンに来てもらい、009を診て(見て)もらったのですが、保守部品がほとんど残ってません。
考え得る全ての保守部品を持ってきてもらったのですが、メカにいくつかバージョンがあるらしく、ウチの初期バージョン(1988年購入)は2本のベルトしか部品在庫がないことが判明!(号泣)
購入から15年、保守部品が全て残ってることの方が奇跡かもしれませんが、009を使い続けるには幾多の困難が待ち受けています。
 1,まず機種そのものが古い
 2,ソニーの子会社化で資料などどんどん処分されている
 3,保守部品そのものが自然劣化を起こしている(ゴム部品のひび割れ・硬化)
 4,メカのタイプによって部品が微妙に異なり、後期型でもストックがなくなりつつある

つまりですね、もうこれは自然死を待つだけの、事実上の


 死刑宣告


です。(涙)

こうなったらダメ元で、分解メンテナンスやってみることにします。
テープスタビライザーがあるために、分解はかなり面倒なんですが(実は一度分解して苦労した)、半分ヤケクソでメンテを強行します。

ああ、カセットテープもいよいよ幻のメディアになるのか・・・・・・。


途中経過編(2002/11/05)

ダメ元でメンテするつもりでしたが、古い機種の修理を行なうお店を発見し、自分で壊す(?)前に修理依頼してみました。
これでまた復活すれば万々歳なのですが・・・・取り敢えず続編乞うご期待!


本編その1(2002/11/07)

009本体は入院中ですけど、書きかけのまま放置しておくのも気持ちが悪いので、入院前にまとめたレポートを載せちゃいます。

XK-009(以下009)は、1988年に発売した高級カセットデッキです。
当時、アイワはブランド名を2本立てにしており、高級路線はEXCELIA(エクセリア)を使っていました。
高級といっても、数万円で買える機種にEXCELIAブランドを掲げていたものもあり、どちらかというと高級というより音質重視のブランドだったように思います。
当時は究極のテープメディアとしてDATがテイクオフする頃で(結局政治的な絡みで失速してしまったのが残念です)、そのDATに対するアナログテープメディアの最高峰を目指して作られたのがこの009であり、"カセットデッキのアイワ"としての意地を見せた機種かと思います。



009には数多くの特徴がありますが、何と言っても一番の特徴はAMTS(Anti-Modulation Tape Stabilizer)と命名されたテープスタビライザーでしょう。
これは音質を劣化させる原因の1つであるカセットハーフの振動を、約1キロの圧力で押さえ付けて防ぐというものです。
そのため、テープを挿入してテープフォルダを閉じると、プランジャー(ソレノイド)が動作してテープをがっちり押さえ付ける音がします。この音がかなり大きく、初めて使う人は大抵ビックリします(未確認情報ですけど、後期ロットではこの音を低減するよう改善してあるそうです)。


また、駆動系は贅沢にも3モーターで構成され(下位機種は2モーター)、テイクアップ側にはアイドラーではなくベルト駆動を採用し、加工精度の高いフライホイールとの相乗効果もあって、ワウフラッター値はカセットデッキとしては最高の0.018%を達成しています。おそらくこの値は民生機として今でもベストだと思います。
左の写真は、メカを内部から見たものです。
モーターが3つあるのが分かると思います。
矢印は、スタビライザを駆動するプランジャーです。


ヘッドにはアモルファス(録音・再生ヘッド)とセンダスト(消去ヘッド)を採用しています。消去ヘッドにはフェライトを使うことが多いのですが、フェライトが持つ保磁力の強さが災いして、テープ再生時に消去ヘッドの磁気がテープに記録された高域信号に悪影響を及ぼして音質劣化を招きます。そこで保持力の弱いセンダストを採用しています。


その他、ヘッドは亜鉛ダイキャスト製のヘッドブロックに精密固定され、ヘッドの振動による変調ノイズも抑えています。
更に、ヘッドブロックには録音ヘッドワイヤから再生ヘッドワイヤへのバイアス漏れをカットするシールド板がセットされています。
009は先に述べたAMTSやセンダストヘッドの採用、そしてバイアスシールド付きヘッドブロックの採用と、録音だけでなく再生にも注目していることが特徴でしょう。
写真はヘッドブロックの様子です。シールド板の状態がよく分かるかと思います。



外観では、背面に突出した2つの電源トランスが特徴的です。
当時からアナログ回路用電源とデジタル用電源を分離することと、振動するトランスをできるだけ制振することが常識でしたが、個人的には009内部にスペースの余裕があることと、背面パネル素材の制振が不十分なことから、この効果には懐疑的です。
むしろソニーの最上級機TC-K777ESを意識したか、飛び出したトランスの視覚的効果の方が大きかったのではないでしょうか?



機能としては、曲の頭出し機能すらない、いかにも基本重視のデッキでした。
その代わり、バイアス調整とテープ感度を正確に調整できるよう、発振器内蔵のマニュアルキャリブレーション機能を搭載しています。イコライザーに至っては3段階(LOW/NORMAL/HIGH)切換えが可能で、テープの性能に合わせて細かにマニュアルチューニングできる楽しみ(?)もありました。


このように、他社が回路技術やオーディオ用選別部品を使うことで音質向上を狙うのに対し、009では録再の出発点であるヘッド及びメカ系にスポットを当てているのが特徴です。
特にメカの精密さと応答性は素晴らしく、例えばポーズ状態からポーズ解除に移行するのも、ほぼ瞬間的に反応してくれます。その他の動作もキビキビとしており、使っていてストレスを全く感じさせません。
内部を見ると他社の同クラスデッキほど高級な部品が使われていないのですが、その分のコストは全て新機軸に回されたと思われ、むしろ定価99800円でこれだけの性能と音質を達成できたのは、"カセットデッキのアイワ"の底力だったと言えるでしょう。
最近のローコストなヘッドフォンステレオしか知らない人には、メーカーが詐称するCDと同等のMDの方が便利で音質もいいでしょうけれど、この009とMDを比較したら、音楽信号を削って圧縮したMDは足元にも及ばないです。


それでは、内部をもう少し詳しく見てみましょう。



トップカバーを外した様子です。
ヘッドからの配線(矢印)は、音質劣化を最小限にするため、コネクタを使わず基板直付けとなっています。メンテナンス性は悪いですけど、ここまでこだわったカセットデッキは、私が知る限りこの009だけです。




一般的なアイドラー駆動ではコギングが発生するため、わざわざ録再専用リールモーターを装備しています。モーター→アイドラー→細いゴムベルトでリールを駆動するわけですが、このゴムベルト(矢印)が劣化するとストレートに影響が出ます。
しかも製造から15年が経ち、このゴムベルトの在庫もないようです。
それにしても、芸術的なメカだと思いませんか、これ?




ヘッドブロック拡大写真です。
こんなに頑丈で、しかもシールド装備のヘッドブロックを搭載したのは、おそらくアイワだけでしょう。他の部分のコストを多少ケチったぐらいではとても採算に合いません。ものすごいこだわり方です。
配線に純度99.997%のPC-OCCが使われているのが見えます




インシュレータ(というか足)です。
取り外して初めて気が付いたんですけど、これってプラスチック成型された安物です。
いくらカタログで「独自の構造を持つ大型インシュレータ」と言われても、あまり信憑性はないですねぇ。尤も、インシュレータにコストかけたところでコストに見合った改善があるとは私も思っていませんけど。



悪口ついでにもう1つ。
メカにこだわり過ぎたのか、基板上ではお粗末な事態が多発してます。
いざ部品を取り付ける段になって、他の部品と干渉したりフロントスイッチから伸びる延長シャフトと当たるため、真っ直ぐ取り付けることができなかった部品が散見されます。支障はないでしょうけど、何ともお粗末な感じです。


ドルビーNR基板です。
ソニー製の業界標準とも言えるICを使ってます。
コンデンサが立ってたり寝てたりと、何ともはや・・・・。
基板を見ると一目瞭然ですが、片っ端からオーディオ用部品を使うようなことはせず、特に効果が出ないところは汎用の安い部品で構成されています。これはこれで1つの定見でしょう。
オペアンプなどは、もう少し高精度な物に取り替える価値があるかな。


当時のAIWAの広告です。
EXCELIAはAIWAの高級ブランドかと思いきや、安物のデッキやCDプレーヤをEXCELIAブランドで出したりと、今ひとつコンセプトが見えませんでした。




主な仕様
(出典:EXCELIA カセットデッキ総合カタログ 1988年6月版)
EXCELIA XK-009 STEREO CASETTE DECK (\89,800)
ヘッド  (再生)PC-OCC巻線ピュア・アモルファスヘッド 
 (録音)PC-OCC巻線ピュア・アモルファスヘッド 
 (消去)ダブルギャップセンダストヘッド
モーター  システムサーボモーター (キャプスタン専用)×1 
 DCモーター (再生/録音)×1
 DCモーター (FF/FWD専用)×1
ワウ・フラッター  0.018%(WRMS)
 ±0.035%(WPEAK)
周波数特性 メタルテープ:
 20〜22kHz±3dB (-20dB)
 20〜18kHz±3dB (0dB)
CrOテープ:
 20〜21kHz±3dB (-20dB)
 20〜15kHz±3dB (0dB)
LHテープ:
 20〜20kHz±3dB (-20dB)
 20〜12kHz±3dB (0dB)
SN比  95dB(dbx ON メタルテープピークレベル)
 75dB(Dolby C NR ON メタルテープピークレベル)
寸法  469(W)×136(H)×432.7(D) mm ※サイドウッド含む
重量  10.2kg