National VX-2000 レポート

Last Update : 2005/02/05
First Release : 2003/05/04






●概要

VX-2000は、ソニー(ベータ方式)とビクター(VHS方式)のビデオ戦争勃発直前に発売された、幻のビデオデッキです。
松下電器の子会社・松下寿電子が独自に開発したビデオで、VX方式と呼ばれています。
当時はソニーのベータ方式、東芝・三洋のVコード方式、ビクターのVHS方式など、いろいろな規格が乱立しており、どの方式が主流になるかまだ不明でした。
ベータ方式とVHS方式については、詳しいサイトがいろいろありますので、そちらをご覧頂くとして、ここでは概略を説明します。

ビデオ方式の歴史
 1973年??月 松下電器、オートビジョン発表(規格のみ)
 1974年09月 東芝・三洋がVコード方式ビデオ発売
 1975年05月 ソニーがベータ方式初代機SL-6300発売(229800円)
 1975年10月 松下電器が四国地区限定でVX-100発売(198000円)
 1976年06月 松下電器がVX-2000発売(210000円)
 1976年06月 東芝と三洋がXコードII方式発表
 1976年09月 ビクターがVHS方式初代機HR-3300発売(256000円)
 1976年12月 日立(VT-3000、2580000円)、シャープ(VC-5000、256000円)がVHS方式初代機発売
 1977年01月 三菱がVHS陣営参加、初代機HV-1100発売(268000円)
 1977年02月 東芝がベータ初代機V-5200発売(255000円)
 1977年03月 三洋がベータ初代機VTC-9000発売(268000円)
 1977年06月 松下電器がVHS方式初代機NV-8800発売(266000円)

この推移からも分かるように、松下はビデオ方式を自社規格のものを押し進めるのか、他社の方式を採用するのか、方向性が定まらずに迷走していた感があります。
既に商品化され先行しているベータ方式ではソニーの後塵を拝することになり、VHS方式では子会社ビクターの技術に屈するという社内感情があり、できれば自社で開発した方式でイニシアティブを取りたいのが本音だったのでしょう。
そこで登場したのが子会社の松下寿電子が開発したVX方式。
ワンヘッド方式記録、最長100分(後年120分に延長)の録画時間(当時ベータは最長60分)の特長を持ったビデオ方式でした。
四国限定で発売したVX方式のテスト販売モデル・VX-100は僅か3週間の期間限定販売で(何故四国限定だったのかは不明です。推測ですが、生産していた松下寿電子の工場が四国にあったから??)、お世辞にも画質がよいとは言えないVX方式を翌年6月に全国展開したのも、ワンヘッド方式で他方式よりローコストに生産できるメリットと、チューナー内蔵で安い販売価格ゆえでしょう。
一説によると、VX-2000は月間1万台弱のペースで売れたようで、VHS販売発表時もVHSは高級機、VX方式は普及機の位置付けでした。
もちろんその後、VX方式は自然消滅の運命が待ち構えていましたが・・・・・。


●仕様




●VX方式規格(括弧内はVHS方式標準モードの比較参考値)

テープ幅:
 12.65mm(12.65mm)
記録再生方式:
 回転1ヘッドα巻きヘリカル走査(回転2ヘッドヘリカル走査)
テープ走行速度:
 52.133mm/s(33.35mm/s)
ヘッドシリンダー径:
 48mm(62mm)
相対速度:
 9.091m/s(5.8m/s)
ビデオトラック幅:
 48μm(58μm)
ビデオトラックピッチ:
 73μm(58μm)
オーディオトラック幅:
 0.4mm(1.0mm)
コントロールトラック幅:
 0.75mm(0.75mm)
輝度信号変調方式:
 FM変調(3.3〜4.6MHz) /(FM変調(3.4〜4.4MHz))
カラー信号記録方式:
 低域変換(688.374kHz) / (低域変換(629.371kHz)PSカラー記録方式)
カセットテープ:
 寸法:213x146x44mm(188x104x25mm)
 重量:550g(280g)




上はVX方式のトラックパターン図です。
これを見て分かることは、
 1, オーディオ信号とコントロール信号は映像信号より先に深層記録され、映像信号をテープ幅いっぱいに上書きする
 2, VHSやBetaと異なり、ビデオトラックの間にガードバンドが設けられている
 3, テープの走行方向とヘッド回転方向がVHSやBetaと逆
ということです。
特に注目なのは1番で、VHS HiFiの深層記録(1983年)より以前に松下は深層記録方式を採用していたことでしょうか。


1970年代のビデオデッキらしく、非常に大型です。
ロータリー式のチャンネル切替も懐かしいです。
しかし作りはしっかりしており、とても約30年前の電気製品とは思えません。

VX-2000のカタログに掲載されている写真です。
正面のツマミ類が実機と異なり、全て表に出ています。
想像ですが、これは撮影用に用意した最終試作機で、発売直前にシーリングカバーを付けてつまみ類を見えないようにしたのではないかと思います。
ゴチャゴチャと調整つまみがあると、取り扱いが難しく感じられますからね。

正面トップにある大きなVX-2000プレート。
VX-2000には、いわゆる"方式ロゴ"がありません。
一社1代限りだったので必要はなかったわけですが・・・・。

では、順番に拡大して見ていきましょう。
まずはピアノキー式の操作ボタン群です。
このボタンを押すことで、内部のスイッチやメカを直接駆動するため、結構力が必要です。
見ての通り非常に基本的な機能だけで、ピクチャーサーチやスロー再生などは一切ありません。

VX-2000特有のイジェクトレバー。
左にスライドするとカセットのテープ保護シャッターが閉じ、そして更に左端までスライドさせて下に押すとカセットが出てきます。
電動ではなく、全て人力で操作可能です。
今となっては逆に新鮮です。

レバーを一番右までスライドさせると、カセットのテープ保護カバーが完全に開き、ピンチローラーがキャプスタンに押し付けられて準備完了です。
BetaやVHSで必要なローディングプロセスが、VX方式では不要で、しかも人力でテープをセットできるのが特徴です。

今では見なくなったロータリーチャンネル。
純機械式のため、タイマー録画もチャンネルは固定です。

カセットを挿入したところです。
当時はビデオデッキをテレビの上に置いて使うことを前提にしていたので、BetaもVHSもトップローディング式でした。
カセット自体に厚みがあるVX方式は、フロントローディング式になっても、デッキ自体の厚みを薄くするのは困難だったかもしれません。

テープをセットすると、上部の小窓から残量が目視できるようになっています。


ナショナルロゴとシリアル番号です。
高価な商品だけあって、ナショナルロゴもお金がかかってます。(^^;

フロントパネルのシーリングポケット内です。
一番右側は、ヘッドが結露した際に温風を当てて乾燥させるためのブロワースイッチです。

"アンテナ切替"という変わった表記のスイッチです。
これってTV/VTR切替スイッチのことですよね?

底面には分解手順図が載ってます。
修理するには非常にありがたい。(笑)

底面に調整VRポイントが3つあります。
基板上のVRを直接回すためだとは分かってますが、こんな重たいユニットの底面にあるんじゃ調整も楽じゃありません。

底板を外してメイン基板を引き出したところです。
基板は金属フレームに固定され、そのフレームごと立てることができるので、メンテナンスは非常にやりやすいです。
筐体は大きいですが、案外基板の密度は高くなく、空間に余裕があります。
他の小さな基板も、フレームに固定され、実にしっかり作ってあります。(だから重くなるわけですが)

メイン基板を立てて、メカ部を見たところです。
ローディングメカがないので、かなりシンプルな構造です。

傑作なのがコレ。
ベルトの振動を抑えるために刷毛のようなものを取り付けてあります。
非常に原始的かつ効果的な方法です。
しかしこれ、消耗品だと思うんですが、保守パーツとして在庫を持っていたんでしょうか・・・?

このデッキ、非常に程度はよいのですが、操作するとしばらくして自動停止してしまいます。
原因は、写真下部のソレノイドが動かないため、上矢印のアイドラーが右にスライドせず、巻き取りリールを駆動できないためです。
テープを巻き取れないため、センサーが働いて自動停止するわけです。
いろいろ調べてみたところ、ソレノイドに正常な電圧が印加されていないような感じでしたが、今一つ解決策が思い付きません。
なお、手でアイドラーを動かしてやると、一応画像は出力されます。

今度は側面です。
チャンネルが付いている右側です。
当たり前ですが、ここにチューナー基板が取り付けられています。

ヘッドを上部から見た様子です。
いわゆるローディングメカがないので、可動部品がほとんどありません。

横から見たヘッド&メカ部分です。
手前に見えるのは巻き取り用のリールです。
よく見るとリールも2段になっているのが分かります。

ヘッドドラム拡大写真です。
ワンヘッドで一気に1フィールドを記録するため、テープ相対速度が速く、その分ヘッドドラム径が小さくできます。
ヘッドドラムの下にあるのは、テープカバーを上下にスライドさせるためのギアです。
上部から見た時の小型でシンプルなメカは他方式に比べてアドバンテージがあるものの、縦方向(厚み)に関してはメカもテープも改善の余地がなく、薄型化には不利だったように思います。

カセットホルダーの横にあるCPUファンのようなモノは結露防止用ブロワーです。
BetaやVHSのようなローディング方式の場合は、ヘッドの上部から風を送るようになっていましたが、カセットがヘッド全体を覆うVX方式では横から風を当てるしかありません。

ちなみにヘッド側から見たブロワーの吹き出し口。

ヘッドがビデオデッキの頭脳なら、このACモーターは心臓でしょう。
ビデオの回転部品は全てこのモーターから駆動されています。
かなり大型で、筐体からかなり飛び出しています。

リアパネルです。アンテナ端子だけでなくビデオカメラ用の端子も付いています。
真ん中の飛び出した部分に上記のACモーターが入ってます。

アンテナ端子です。
UHFは入力と出力が一ヶ所にまとまっていますが、VHFは入力のみです。
出力は隣のカメラ端子側に用意されています。

各種入出力端子です。
リモコン端子はカメラ用なのか、あるいはオプションで後日販売するつもりだったのか・・・・。
ピンジャック出力は、オーディオとビデオが色分けされていません。(今はビデオが黄色、オーディオが赤と白と決まっていますが)

消費電力98Wはさすがに大食らいです。
まぁこれだけのメカを動かすのですから当たり前ですが。
なお、MKEはビデオを製造した松下寿電子の略称です。

よく見るとスライドカバーがあり、そこを開くと中にRFコンバーターが入ってました。
電源仕様が50Hz専用となっているのはACモーターの回転数を関東の電源周波数(50Hz)に合わせているからですが、このコンバーターはNHKの空きチャンネルである2チャンネルにRF出力をコンバートするためのものでしょう。
おそらく関西では1チャンネルのコンバーターが入っていたんでしょうね。


RFコンバーターを引き抜いたところです。
回路は金属ケースにしっかり収められています。
裏側にコネクタが出ており、押し込むと本体側コネクタにささって装着完了です。

リアパネルにも画像調整用VRが2つあります。
3面(フロント・リア・底面)に調整箇所が分散してあるので、画像調整は不便です。

これがVX方式のウリの1つだったワンヘッドダイレクトローディング方式の概略図。
テープを引き出さず、カセットの中でヘッドドラムにテープを巻き付けていた。
ベータのUローディング、VHSのMローディングに対してアルファ(α)ローディングと呼んでいたらしい。
おかげでメカは小型化が可能だったが、カセットは分厚くて大きかった。

VX用テープです。
これは後期に発売された2時間用テープです。
1時間用で5000円した時代ですので、この2時間用は一体いくらだったのでしょうか。
とにかく今の感覚からすると異様に大きい(分厚い!)です。

テープ窓には簡易残量時間表示のメモリ付きです。

サイズを比較してみました。
右からVX・VHS・Beta・8mmです。
表面積でBetaの約2倍あります。
まぁそれだけならまだ許容範囲なのですが・・・。

今度は厚み比較。
VXテープはVHSやBetaの2倍あります。
VXテープはカセットケースの中でテープを2段に巻いてあるため、分厚くなるのは当然の結果なのですが、それにしてもこのサイズと厚さは圧巻です。
「弁当箱」と呼ばれたのも不思議ではありません。
VHS方式がコケて、VX vs Beta の図式が成り立っていたら、今頃はBetaが残っていたかもしれません。

テープ裏側です。
右がヘッド挿入口、左が巻き取りリール挿入口です。
ヘッド挿入口はテープがむき出しにならないよう螺旋状のカバーが付いており、ビデオデッキにカセットを入れるとカバーがグルッと回ってテープが露出します。
左の巻き取りリール側は、よく見ると2段になっているのが見えると思います。

巻き取り側拡大写真。
VHSやBetaが左右のリールにテープを巻いているのに対し、VX方式ではテープを上下2段に巻いているのでこのような形状になります。
よってカセットがVHSやBetaの2倍の厚さになるのは必然のことと言えます。

カセットの側面にあるキャプスタンローラー挿入口です。
通常はシャッターで閉じていますが、ローディング時(実際はテープそのものはローディングされないので、正確にはデッキにカセット挿入時)に左の写真のようにシャッターがスライドしてテープが露出します。

テープカバーを外した状態のアルファ巻きの様子です。
確かにカセットの中でテープが2段に巻かれているのが分かります。

これがVX-2000のアクセサリー群。
当時はタイマーが別売だった。
ビデオテープが今とは比べ物にならないほど高価でした。
Special Thanks : 瑞鶴さん
  いつもご協力ありがとうございます。