SONY DAT Deck DTC-57ES Repair Report (2)






2004年11月07日

とある経緯で、ヘッドアンプを交換しても再生できないという57ESの修理を引き受けることになりました。
症状は、再生できない、内部よりリレーのカチカチ音が聞こえてサンプリング周波数が定まらない、というもの。
ヘッドアンプはソニーから購入した新品のものなので、通常はこれで解決するはずです。
早速外筐を取り外し、内部を見ることに・・・・。


これが交換済みのヘッドアンプ。
配線はしっかりされており、問題なさそうです。
(実は配線不良や接続ミスを疑っていた)



横からよく見ると、ヘッドアンプ取り外し・取り付けの際に板金が反ってしまい、しっかりアースが取れていません。
それが原因かな・・・・・と思い、シールドケースの隙間を減らしてみましたが、症状に変化は見られませんでした。



基板がダメならどうしようもないですが、基板よりメカの方が壊れやすいという法則に従い、まずメカを取り外してメカブロックを調べてみることに。
量産性を考えてあるせいか、このメカを本体から抜き出すのに、コネクタ2本とネジ3個でOKです。



ローディング部の様子。
特に変形や部品脱落といった問題もありません。
一応ピンチローラーやキャプスタン、ガイドポストを専用アルコールでクリーニング。



メカ後部から回転ヘッドを見ると、ボロボロになったヘッドクリーナーのカスと、黒い粘着性の汚れが付着しているのが見えます。




ヘッド部分拡大写真です。
黒い線は汚れです。クリーニングテープでは除去不能なほどしつこい汚れです。



DATのヘッドはビデオヘッド以上にデリケートなので、直接綿棒でクリーニングすることは避けたいのですが、汚れがひどいので気を付けながら少しずつ時間をかけてクリーニングします。
写真はクリーニング中の様子。一拭きでこんなに汚れが取れます。



ヘッドクリーニング後もしばらく改善されなかったので、繰り返しヘッドクリーニングテープをかけて様子を見ます。
5回(約1分)クリーニングテープの再生を繰り返したところ、突然再生できるように・・・・。

ヽ(^▽^)ノ

32kと48k、SPとLPの、それぞれ異なるモードで録音したテープを取っ替え引っ替え再生しても、もう迷うことなくきっちりモードを切り替えて再生できるようになりました。
再生音も全く問題なし。歪みやレベル変動もなし。



取り敢えず再生できるようになったので、ヒートランの前に57ESの持病の1つ、半田クラック対策をしておくことに。
しかしこの57ES、やたら後付け部品が多いです。
これはメイン基板に付いているサブ基板です。
自分の57ESにこんな部品あったっけ!?



メイン基板を取り外して裏返したら・・・・・・・。
何だか試作品のような基板が出てきました。
これ、明らかに自分が所有する57ES×2台と違います。
ただ、手作業による回路追加が行われているため、半田付けはしっかり行われていて、再半田は不要でした。



調べたところ、やはり基板番号が異なりました。
末尾番号が1つ若い(低い)ので、今回の修理機はおそらく初回ロットだったのでしょう。




ちなみに修理機は1995年に2度、入院したようです。
生まれつき丈夫ではなかったようです。(笑)
なお、本機のシリアル番号は2045xx(4500番台)です。
自己所有機は2台とも205xxx(5000番台)でした。



一応プーリーのスリップ対策も。
この57ESも早送り・巻き戻しボタンを押してから数秒経たないと反応がありません。
根本的にトルクが弱いとしか思えません。



最後にピンジャックやコネクタをクリーニングし、接点復活剤で磨きます。
これで修理自体は完了ですが、何か外観がややくすんでいるように感じたので、中性洗剤で外筐やフロントパネルを拭いたら、ご覧の通りヤニだらけ。

 ┓(´_`)┏

(左側が拭いた後、右が拭く前の状態)



これで修理完了です!




なお、元々使われていたヘッドアンプと、最近購入したヘッドアンプの基板を比較してみました。
1箇所だけ違いがあるのにお気付きでしょうか?
(左が旧ヘッドアンプ、右が現行ヘッドアンプ)



やはり基板番号も違います。
旧ヘッドアンプは1-639-300-11、現行品はちょっと見にくいですが1-639-300-12です。
末尾2桁は、メイン基板の番号と同じなので、あるいはロットごとに統一してあるのかもしれません。



ちなみにこれがチップケミコンの液漏れの状態。
ご覧の通り電解液が基板に浸透して、また半田部分も腐食しているのが目視できます。
こうなるとケミコン本来の性能は全く維持できず、回路が機能しなくなるもの当然です。
これが原因で、90年代当時の電子機器のどれだけが粗大ゴミになったことか・・・・。






2004年11月19日

まだダメです、直ってません!! (+_+;

再生は48kHz/44.1kHz/32kHz 全てOKなのですが、録音すると32kHz以外はノイズだらけで録音不可能です。
前回、録音テストしてOKだと思ったのですが、その時はRec ModeがLong(32kHz)になっていたのに気付かず、録音OKと判断したのでした。
しかし、32kHzでOKなら、普通はどのモードでもOKだと思うのですが、どうやらヘッド周りがもう寿命のようです。
こうなると、ソニーに修理に出すか、ジャンク品を入手して臓器移植するか、です。
持ち主に聞いたところ、取り敢えず録音再生できればよいとのことでしたので、同等機種のジャンク品を手に入れて交換することにしました。
57ESと同じタイプのメカを使っているのは、59ES/59ESJ/690/790なので、外観は傷だらけでもヘッドが生きていそうなものをオークションで探してみたところ、タイミングよく690が安く出ているのを発見。


コンディションは、録音再生はOKだけどイジェクト不良というもの。ヘッドさえ生きてれば構わないので、迷わず入札。
結局4100円で平穏に終了。送料が1270円なので、5000円ちょっとで手に入れることができました。
ちなみに、DTC-690は1993年3月発売、定価75000円のローコスト機入門機という位置づけでした。
(写真左:DTC-690)



さて、ジャンク品の690ですが、外筐を取り外してビックリ。
57ESより更にコストダウンが進んで、中身はスカスカ。
DATというフォーマットを採用しただけのオモチャです。

57ESに比べ、更にコストダウン。
電源はトランスだけ、平滑回路はメイン基板に集約し、オーディオ回路も安物のラジカセのようになってしまいました。
"夢のデジタルオーディオ"も、実に無惨な姿になったものです。
イジェクト不良の原因は、ローディングポストが途中でスタックしてしまい、そのまま停止してしまうのが原因でした。


まぁ本体に興味はないので、早速メカ(正立透視型カセットコンパートメント)を摘出。


え゛まぢ!? ( ̄□ ̄;
フレームまでプラスチックになってる・・・・。┓(´_`)┏



ちなみに、こちらが57ESの正立透視型カセットコンパートメント。
プラスチック部品は多いですが、フレームは金属製。
そりゃね、今回の修理にフレームは必要ないですけど、ここまでコストダウン(=耐久性低下)したら、ユーザーが離れていくことは自明の理だと思うんですが。



57ESと690の正立透視型カセットコンパートメント比較(正面)。
左が57ES、右が690用です。
690の方が、奥行きが長いのが分かります。
57ESはカセットの出し入れがやや困難だったのですが、690では取り出しやすくなっています。



横比較です。
今度は手前が690用、奥が57ES用です。
明らかに57ES用の方が高さがあります。
即ち、正立透視型カセットコンパートメントを採用したために、どうしても上下方向のスペースが必要となったため、57ESまでのソニー製DATデッキはどれも高さを抑えることができませんでした。
そのため、59ESから奥行きを長くしてヘッドブロックを従来より寝かせ、高さを抑えることにしました。
でも、それと同時にコストも抑えた低耐久性のものになってしまいました。



ケチ付けてたら一向に先に進まないので、取り敢えずヘッドブロックを摘出します。
幸い、この部分は57ESも690もほとんど同じ(モーター基板の有無の違いはありますが、その他は全く同一)なので、今回はこれを57ESのものと差し替える計画。
もしヘッドが逝ってたなら、これで一挙解決できるはず。



ちなみにローディングガイドは57ESからプラスチック化されたため、ご覧のように経年劣化でクラックが入り、運が悪いとローディングポストがこのクラックに引っかかってスムーズにローディング・アンローディングできなくなります。
実は今回のイジェクト不良の原因は、このクラックかと思っていたのですが、ガイドの段差をなくしても症状が変わらないので、どうやら純粋にメカのトラブルのようです。



メカを持ち上げたら、中から小さなプラスチック部品が出てきました。
よく見ると、何かのワッシャーのようですが、割れていて意味を成してません。



イジェクト(ローディング)エラーの原因はこれでした。
写真は正常な状態ですが、この690のギアに付いているワッシャーは割れて脱落していました。
このワッシャーが割れて外れると、このギアが回るときにギアが浮いて空回りし、ローディングポストが正常に動かなくなります。
ローディングポストという重要な部分を動かすギアがこれでは、テープの巻き込み・切断事故が多発するのも納得できます。




ということで、割れていないワッシャーに交換し、(気休めですが)再発防止にロックタイトで固定しておきます。



ちなみに、ヘッドブロックを上下に分割した状態がこれです。
こちらはヘッドやローディングポストがある側です。
手前の白い部分が左右に動くことで、ローディング機構が動作します。
改めて言うまでもありませんが、全部プラスチック製です。



こちらは駆動モーター、リール側です。
もう何も言いません。


取り敢えずメカの修理が終わったところで、元通りに組み立て。
何せワッシャー交換のためにはほぼ完全に分解する必要があるので、再発したら非常に面倒です。
再発しないことを祈りつつ、修理したカセットコンパートメントを57ESに組み込む。
そしてテープ挿入・・・・。


ヽ(^▽^)ノ ローディング成功!



耐久テストを兼ねて、20回連続ローディング・アンローディングを繰り返す。
これも難なくクリア!
しかもメカが比較的新しいことと、駆動部にグリスアップしたため、元57ESより動作音が静かでスムーズ。(^o^)v

さて問題の録音再生。
再生は全モードで問題なし。次は録音テスト。
アナログ入力と光入力、録音モードを48kHzと32kHzの計4通りの組み合わせでテスト。
何せ同時モニターできないので、再生するまで結果が分からない。

さて、再生・・・。



ヘ(^^ヘ ノ^^)ノ 成功 



どのモードでも、非常にパルシブな音から大音量・低レベルまで、どれもノイズを感じることなく安定した音を出してます。
ヘッドの劣化が始まると、再生できても録音が不安定になるとは知りませんでした。
しかもメカの修理スキルまで身に付いたし、なかなか学んだことの多い修理でした。