SONY TA-F333ESR オーバーホールレポート






平成元年3月17日に購入した、ソニーの中級リファレンスアンプ・TA-F333ESR。
当時はバブル景気の真っ直中、しかもオーディオブームという追い風もあって、各メーカーは今では考えられないほど気合いを入れてオーディオ製品を作り込んでいました。
この333ESRは、各メーカーが持てる技術を総動員して激戦区となっていた79800円クラスのアンプです。
それまで回路技術一辺倒でパッとしなかったソニーのアンプが、方針を物量投入へと大転換し、前代モデル333ESXで一躍トップクラスに躍り出ました。
その後マイナーチェンジした333ESX IIを経て登場したのが333ESRです。
333ESシリーズは333ESR→333ESG→333ESL→333ESA→333ESJと続くのですが、内部構成はどれも酷似しており、基本的な部分は333ESRで完成したと言えます。
333シリーズの後半は、MOS-FETの採用という変化があったものの、バブルがはじけて物量作戦からコストダウンへと流れが変わってしまい、一見無駄に思えるような小細工が省かれています。
しかし、その細かな積み重ねが積もり積もって完成度は高まるのであり、デバイスや構造の劇的な改善がされぬままコストダウンしてしまったのは、オーディオブームの凋落とオーバーラップするものがあります。


TA-F333ESR 主な仕様

回路方式 パワーアンプ部
 スーパーレガートリニア 全段直結ピュアコンプリメンタリー
 トリプルダーリントン SEPPパワーアンプ
プリアンプ部
 低雑音ハイゲイン型イコライザーアンプ
 パッシブ型ダイレクトトーンコントロール
定格出力 140W+140W(20Hz〜20kHz,4Ω負荷) 
120W+120W(20Hz〜20kHz,6Ω負荷) 
105W+105W(20Hz〜20kHz,8Ω負荷)
出力帯域幅 10Hz〜100kHz(50W出力,高調波歪率0.02%,8Ω負荷)
SPEAKER適合インピーダンス 4〜16Ω
高調波ひずみ率 0.002%(10W出力時,8Ω負荷)
混変調ひずみ率 0.004%(定格出力時,8Ω負荷,60Hz:7kHz=4:1)
スルーレート 125V/μsec,250V/μsec(インサイド)
ダンピングファクター 100(1kHz,8Ω)
周波数特性 CD,TUNER,TAPE1〜3  2Hz〜200kHz(+0,−3dB)
SN比 PHONO 87dB(MM),68dB(MC) 
CD,TUNER,TAPE1〜3 105dB
入力感度および 
入力インピーダンス
PHONO,MM 2.5mV 50kΩ
MC(40Ω)  170μV 1kΩ
MC(3Ω)   171μV 100Ω
CD,TUNER,TAPE1〜3 150mV 50kΩ
出力電圧および 
出力インピーダンス
REC OUT 1,2,3 150mV/1kΩ
HEAD PHONE 25mW/8Ω
トーンコントロール BASS(100Hz)
  +4,−3.5dB(ターンオーバー周波数200Hz)
  +6,−5dB(ターンオーバー周波数400Hz)
TREBLE(10kHz)
  +7,−8dB(ターンオーバー周波数3kHz)
  +4,−5dB(ターンオーバー周波数6kHz)
サブソニックフィルター 15Hz以下,−6dB/oct
電源 AC100V 50/60Hz
消費電力 270W
大きさ 470(幅)×165(高さ)×435(奥行)mm  (最大突起部を含む)
重量 21.2kg


さて、333ESRを購入して10年以上も経つにも関わらず、まだ現役として使っているには理由があります。
1つは、イギリス赴任でその期間中全く新製品を購入できなかったこと。
イギリスにも有名なアンプメーカーがありますが、今ひとつ好きになれなかったことと、日本に持ち帰っても昇圧トランスが必要だったり、故障してもサポートが面倒という、いろいろな理由がありました。
しかも、イギリスにも333ESRを持っていったので、特に不満もないし、そのまま使い続けていました。
次に、日本帰任後はオーディオブームが昔話となっており、物量作戦で作られた333ESRと比べると、新製品はどれも安っぽいのです。
日本の悪いところだと思うのですが、アンプはMOS-FET全盛で、従来タイプの選択肢が全くと言っていいほど残されてないんですね。
とにかく1つの流れができると、一斉にそっちへ向かってしまうのが日本市場の最大の欠点なので、ここでも購入意欲が失せてしまったのです。
多くの場合、新しい方が優れているものですが、オーディオ(ビデオも同様)はとにかくバブル時代の製品が最も豪華にできています。
オークションで古いモデルが今だに高値で取り引きされるのも、今の新製品に魅力を感じない人が多い証拠ではないでしょうか?
しかし、さすがに10年以上も使い続けると、いくら故障知らずだった333ESRも、見えないところで劣化が進んでいると考えて間違いはないでしょう。
そこで、333ESRの延命を兼ねて、オーバーホールすることにしました。

333ESRの内部構成を見ると、可動部品が何ヶ所かあります。
私は常にSource Directで使っているため、信号経路「入力セレクタ→メインボリューム→スピーカーリレー」にある接点部品をリフレッシュしてやればOKです。
入力セレクタとスピーカーリレーは接点復活剤で、ボリュームは交換で臨みます。
分解方法は、サイドウッド→トップパネル→フロントパネル の順に外していきます。
とにかく333ESRは重い(21.2kg)あるので、落としたり、ぎっくり腰にならないよう、注意が必要です(余談だけど、同じ時期に買ったスピーカーは1本で28kgもあり、とにかくこの当時の製品はどれも重かった)。


 ★★333ESRの内部写真★★



制振対策が徹底してます。
ご自慢のジブラルタルシャーシをベースに、333ESXではむき出しだったトランスがコンパウンド充填された金属ケースに収められ、大型コンデンサもがっちり固定されて、徹底して振動を抑える工夫がされています。
ちなみに、トランスを固定するビスが、長年の使用で少しゆるんでました。コンパウンドで抑えた振動が、ビスに集中するんでしょうか。




ESXで多かった電球切れは、ESRではLEDに変更されて、タマ切れは実質解消しました・・・というか、何で最初からLEDにしなかったんだろう?
なお、フレーム(シャーシ)に赤茶色の錆が出てるのは、どうやらウチの333ESRに限った症状ではないようです。
他の333ESX/333ESRを見ても、結構錆びていることから、錆びやすい素材だったようです。まさかソニーもこんな長期に渡って使われるとは考えてなかった!?




A-Class基板。
オーディオ用コンデンサがふんだんに使われ、見事に対称的な回路構成です。
しかもパンクしている電解コンデンサーもなく、思ったより状態がいいです。



圧巻なのはヒートシンク。
素材自体、指先で弾いても全く振動しないのに、更にゴムバンドでフィンを固定する念の入れよう!
見た瞬間、「ここまでやるか!?」としばし絶句。


ただ、経年劣化の激しいゴムなので、コーナー部分に亀裂が入ってました。
かなり熱を持つヒートシンクにゴムの組み合わせは、どうせやるならもう少し工夫が欲しかったかな。



ということで、ゴムバンドが切断しないよう、応急処置としてホットグルーで固定しておきます。

その他、一通りチェックしてみましたが、ホコリ以外に問題はなく、業務用のエアガン(スプレー缶に入ったヤツじゃなくて、エアコンプレッサを使った強烈なエアガン)で内部のホコリを徹底的に掃除。
念のため、電源ヒューズも取り外して接点をクリーニング。電源が入らない原因が、ヒューズの接触不良だった、という案外多い問題もこれで大丈夫でしょう。


●スピーカーリレー&入力セレクタ
トップパネルを取り外したら、背面パネルのスピーカー端子付近にあるビスを全部抜きます。
するとスピーカー端子が付いている基板が抜けるので、端子の谷間(?)にある黒いプラスチックの箱を確認します。
これがリレー回路で、フロントパネルにあるスピーカー出力切換え(A,B,A+B)に従ってカチカチと切り替わります。
このリレー、お世辞にも高級とは言えないです。高級じゃないおかげで、メンテがしやすいというのも皮肉ではありますが・・・。
リレーの黒いプラスチックカバーは、簡単に取り外しできます。爪に引っかけているだけなので、カバーを四方八方に傾ければ、抜き取ることができます。力を入れすぎると、カバーが変形したり割れたりするので、力任せにやらないように。
内部の接点が結構汚れていますから、アルコールと接点復活剤でクリーニングします。




スピーカー端子基板と、リレーボックス。
奥のリレーはカバーを取り外した状態です。





見た目はそんなに劣化していません。
そんなに雑に取り扱ったこともないですし、毎日使っていたわけじゃないので、リレーは交換しないで接点クリーニングで済ませます。





接点は結構汚れていました(茶色い汚れ)。
リレーが密封されているわけではないので、この程度はやむを得ないかなぁ。ま、10年以上使ってこの程度なら、許容範囲とすべきか・・・・。


入力セレクタ基板は、背面パネルのピンジャック付近にあるビスを全部抜き取り、先程取り上げたA-Class基板を外すと、取り外しできます。ここも接点復活剤スプレーで接点クリーニングしておきます(写真取り忘れ)。


●ボリューム交換
ボリュームは、ソニーサービスに注文します。
今はサービスセンターに在庫を持ってないようで、秋葉原SSに電話して着払いでオーダーしました。
部品番号は 1−237−175−11 で、価格は1100円+税です。今回は送料込みで千葉まで合計2210円でした。
納期は3〜4日と言われましたが、確かに4日目に配達されました。

ボリューム交換は、ボリューム交換よりボリューム基板を取り外す方が大変です。
というのも、ボリューム基板はフロントシャーシ(フロントパネルの更に内側のシャーシ)に取り付けられており、これが入力セレクタ基板とブリッジされていて、結局本格的に分解する必要があるのです。
フロントシャーシを取り外すには、かなりの本数のビスを取る必要があります。ジブラルタルシャーシとサイドバーとフロントシャーシとフロントシャーシにビス止めされている基板をよく見て、該当するビスを取り外していってください。
取り付け箇所によってビスの長さが異なるので、ビスの数と位置をメモしておいた方が安心です。



やっと取り出したボリューム基板。
基板に対して直角に取る付けるため、垂直基板を使わずかなり苦労して取り付けています。
この部分は、後継機ではどうなっているんでしょうねぇ・・・・。

ボリュームは、丸ごと交換します。
きれいに半田を取れば、力を入れなくてもボリュームが取り外せます。
交換後は、元の手順で組み立てます。
折角なので、他のボリューム(バランス・トーンコントロールなど)もクリーニングしておきましょう。
トーンコントロールは使ったことがないため、かなり接点不良を起こしてました。(^^; だって邪道なんだもん
かなり回復しましたが、数日使ってないとすぐ軽い接点不良状態になるので、用はなくても時々ツマミを回してやる必要がありそうです。(使わない機能は省いて欲しいなぁ)





ボリューム(可変抵抗)です。アルプス電気の特注品みたいですね。120キロオームの2連式です。
本当はオーディオ用の高級可変抵抗に交換しちゃいたいところですけど、構造上無理ですね。
外部に配線を引き出すぐらいの覚悟があればいいんでしょうが。





ボリュームその2。
ネジが2つ付いているので、簡単に分解して内部を掃除できるのかと思えば、ワッシャがどうしても取り外せないので、素直にあきらめ。
まだ十分使えるので、これはオークションで格安に売却処分します。(笑)
製造から13年、もうそろそろソニーも在庫がなくなってくるころじゃないかなぁ。
(それを考えると、消耗部品は本体を新品購入したときに同時購入しておいた方が安心かも。脱酸素剤と一緒にパックしておこう。)


最後に・・・・

普通なら、オーバーホール後に視聴して

 「ベールが1枚剥がれたような、繊細で澄みきった音に!!!」

と大袈裟に騒ぎたいところですけど(笑)、元々そんなに劣化していたわけじゃないので、劇的な変化はありません。
しかし、接触抵抗が改善されたのは事実です。
音質が若返ったとでも言えばいいのかな、すっきりしたのは確かです。
「何だよ、ボリューム交換したのに、その程度かよ?」と言われそうですけど、ボリュームは常温で何年も保存してあったわけですし、むしろボリュームが製造されてから一度も使われてなかったわけですので、しばらく使わないと本来の性能は発揮されません(一応交換時に接点復活剤でクリーニングしてありますが)。もうしばらく様子を見る必要があるでしょう。

でも、これでもう5年は大丈夫じゃないかな。(^-^)


 -- The End --


P.S. このまま画面をスクロールすると、ウチの333ESRの写真をウザい記事なしに見られます。(笑)