Lo-D HCP-1000


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R1.3
型番:HCP-1000 定価:79800円 発売:1979年

● HCP-1000の概要

Lo-D(当時の日立のオーディオブランド)の独自ノイズリダクションシステム・Compander(コンパンダー)ユニットです。
商品名・コンパンダーユニットの名の通り、dbxと同じ圧縮伸張方式を採用しています。
ただし圧縮比が2/3、伸張比が3/2とdbxより低めで、ブリージングノイズを抑えています。
その代わり、効果もやや少なく、公称値でNR効果20dBとなっています。
NHKと共同で開発したようですが、何故NHKと共同開発したのか不明です。



内部写真

写真上部がフロントパネル、下部がリアパネル。
キャリブレーション基板とボリュームがリアパネルにあるのが分かる。
どの回路も完全ディスクリート構成で、専用ICは全く使われていない。
この内容で79800円はかなり割高ではないか?




コンパンダ方式のブロックダイヤグラム

録音(圧縮)



再生(伸張)



エンコード・デコード特性




コンパンダ方式の特徴
 1,信号レベル検出を両チャンネルの合成信号で行う
  左右別々にレベル検出するのと異なり、左右のノイズレベルの変化の違いがない
 2,レベル検出をピークレベルで行なう
  Super Dを除く他の方式のほとんどがRMS方式。(Super Dはピーク応答型)
 3,信号応答特性を入力レベルで可変
  高レベル時の圧縮伸張動作は500μsecと、他方式の半分以下の時間で応答。
  (低レベル時の応答時間は不明)
となります。

このコンパンダーユニット、結局ライバル他社が次々とノイズリダクションシステムを発表しているので、技術の日立として意地で出したような印象があります。
というのも、非常に短期間しか発売されなかったこと(1981年4月にはカタログ落ちしている)、Lo-Dのカセットデッキに1台も搭載されなかったこと、スペックの割に高価格だったこと、中途半端な商品化だったことなどが挙げられます。

このHCP-1000を細かく見ると以下のことが分かります。

フロントパネル拡大写真


1,メーターは1つで、左右切換え式
  あのハイコムIIより1万円も高いのに、メーターが1つで、しかもスイッチで左右
  切換え式です。フロントパネルの一番左のスイッチで切換え可能です。
2,録音同時モニター可能
  右のスイッチを見る限り、Tape/Source切換えができるので、録音同時モニター
  可能だったようです。
3,マイク入力端子付き
  ライン入力とマイク入力をどうやって切り替えたのでしょうか。
  マイクジャックを差し込むとマイク優先でしょうか。


如何せん資料が少なくて、まだ未知の部分が多いコンパンダーユニットです。
詳しい資料をお持ちの方は是非メールでお知らせ下さい。(2005年12月3日、実機を入手しました。下部参照のこと。)

● HCP-1000の仕様

方式:全帯域直線型圧縮伸張方式
圧縮伸張比:圧縮比2/3 ・ 伸張比2/3
動作時間:圧縮伸張共500μsec
復帰時間:圧縮伸張共200msec
SN比改善量:20dB以上
直線性:ダイナミックレンジ60dBの範囲で±1dB
歪率:基準入力レベル1kHz 0.2%以下
チャンネル数:4チャンネル(録音2・再生2)
入力インピーダンス/感度
 LINE IN:100kオーム以上/60mV
 MIC :300kオーム〜50オーム/0.35mV
 PB IN:10kオーム/80mV
出力負荷インピーダンス
 LINE OUT:50kオーム以上
 REC OUT:50kオーム以上
 HEADPHONE:8オーム〜2kオーム
出力レベル
 LINE OUT:0.5V以上
 REC OUT:0.5V以上
周波数特性:エンコード・デコードにおいて、20Hz〜20kHz±1dB
電源電圧:AC100V 50/60Hz
消費電力:10W
外形寸法:435(幅)×78(高さ)×319(奥行)
重さ:5kg


Special Thanks
HCP-1000カタログ提供:木村様 (どうもありがとうございました)




追加情報(2005年1月30日)

HCP-1000発売前に公開されたコンパンダユニットの画像を入手しました。
2メーターで色もブラックと、HCP-1000とは大きく異なります。
おそらく試作機ではないかと思われます。


 Special Thanks
 画像及び情報提供:辻様 (いろいろな情報、どうもありがとうございました)





2005年12月3日

当サイトの常連さんの昴流さんのご協力により、HCP-1000を入手することができました。
トップパネルに軽くサビが浮いているだけで、非常にコンディションのよいものです(ランプやメーターイルミは点灯し、ツマミ類に欠損なし)。
非常に入手難であることを覚悟していたため、思わぬ展開に感謝感激です。
昴流さん、どうもありがとうございました!

まだメンテ前ですが、取り急ぎ画像を公開します。


フロントパネルの電源スイッチとメーターです。
メーターはレベルキャリブレーション用で、レベルメーターとしての機能はありません。


メーターは1個しかないので、左右チャンネルはスイッチ切換え式です。
TESTとあるのは、キャリブレーションモードのことで、ONにするとキャリブレーション信号を出力します。
ユニークなのは、多くのNRユニットが1kHzを使うのに対し、HCP-1000は400Hzを使っていることです。


コンパンダースイッチ。
Lineボリュームの横に位置するのは、誤操作でON/OFFしてしまう可能性が高いので、あまり感心しません。


ボリュームはLineとマイクがそれぞれ2連式で用意されています。


この当時はマイク入力を装備するのが普通で、HCP-1000も例外ではありません。


内部基板です。
機能の割に基板が多く、配線も複雑です。
また、重量も見た目以上にあります。


コンパンダー回路の拡大写真です。
ご覧の通りディスクリート構成です。
オペアンプはJRCの4558Dで、トランジスタは2SC1740が多用されています。



フロントパネルの各種切換えスイッチ基板です。
どういうわけか配線が多いです。


リアパネル基板です。
録音再生レベル微調整のボリュームは背面にあります。



リアパネルです。
再生レベルの調整ボリュームはPlay Back IN に隣接して用意されています。
ボリュームはツマミが長いので、指で簡単に回せます。


Play Backの右に録音出力と調整ボリュームがあります。


機種銘板です。
製造番号の末尾82というのは、おそらく82台目という意味だと思います。果たして総計で何台生産されたのでしょうか?(^^;


トップカバーに表記されているダイヤグラムです。
信号の流れがよく分かります。
画像をクリックすると別ウィンドウで拡大図が表示されます。
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