Victor ANRS/Super ANRS


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R1.2
型番:NR-50 定価:39800円 発売:1981年7月

● NR-50の概要

ドルビーB・A.N.R.S.・スーパーA.N.R.S.だけでなく、前年発表されたドルビーCの計4方式対応のNRユニットです。
今後スタンダードになるであろうドルビーC方式に、旧来のユーザーをスムーズに移行させるのを目的としたモデル。
ドルビーBとビクター独自のA.N.R.S.方式、更に効果を拡大させたスーパーA.N.R.S.のユーザーをこれ1台でカバーすることができます。
フロントフェースは、スイッチ類を左側にまとめ、右側にはOUTPUTと録音レベルの2つのツマミがあるだけの、一風変わったデザインです。
(追記:当時のビクター製カセットデッキのデザインに合わせたようです。画像は最下部参照のこと。)

● NR-50の仕様 (カタログ(1981年6月)より)




A.N.R.S./Super A.N.R.S. の動作原理

ANRSは、1972年にビクターが開発したノイズリダクションシステムで、Automatic Noise Reduction Systemの略です。
上位方式のSuper ANRS方式と併せて、1980年頃までビクター製のカセットデッキに積極的に採用されました。
開発時期が他方式より早かったことや、ドルビーB方式と互換性があることから、独自方式の割に普及した方式でした。
その後、ドルビーC方式が登場し、敢えて性能の劣るSuper ANRSを搭載する理由もなくなり、その役割を終えました。

ANRSとドルビーBの互換性について
両方式ともレコード協会の基準特性に一致した特性を持つため、ドルビー研究所とビクターの間で互換性を認め合っていたようです。
確かに周波数特性の観点から見れば、両方式とも同じ特性を持つため互換と言えますが、信号処理段階ではドルビーB方式が加算・減算のために主信号路と副信号路の2系統を用意しているのに対し、ANRSでは主信号路のみ(ワンパス)となっています。
ビクターでは加算・減算回路での音質劣化(特に位相の遅れ)を嫌って、2系統処理を避けたようなことをアナウンスしていましたが、位相の狂いはその他の要素でも発生するので、大きなアドバンテージではなかったように思います。
また、ビクターの言い分が正しければ、ANRSとドルビーB方式では特性は同じでも音質が異なったことになります。

ANRSとSuper ANRSの違いについて
Super ANRSは、カセットテープの高域リニアリティを向上させる目的で、1975年にANRSをベースに開発された方式です。
ANRSとは互換性がなく、ノイズリダクション効果はANRSと同じです。
Super ANRSは高域の高レベル信号を録音時に圧縮し、再生時に伸張するもので、原理としては他のNR方式と同じと言えます。
特長は従来のANRS回路に簡単な回路(フィルター)追加でSuper化できることで、ANRSと同じノイズリダクション効果に加えて、
 1, 0VU 10kHz録音で6dB、+5VU録音で12dBのダイナミックレンジ改善
 2, ANRS回路に若干の回路追加で済むため、コストパフォーマンスに優れ、ワンパス(シンプルな主信号路処理)のメリットも生かせる
となります。



ANRSのブロックダイヤグラムです。




エンコード・デコード特性です。
ドルビーBと同じです。





ANRSとSuper ANRSの録音・再生周波数特性です。
ハイレベルほど録音時に高域を圧縮し、再生時に伸長することで、高域のリニアリティを改善しています。
このレベル操作のため、Super ANRSはANRSやドルビーBと互換性がなくなりました。




NRシステム切り替え、各種フィルタスイッチ群です。
録再同時モニターはできません。
ご覧の通り、ANRSとDolby Bは1つのスイッチに兼用となっており、ANRSとDolby Bを切り替えることはできなくなっています。


録音レベルキャリブレーションインジケーターです。
中心から左右に2目盛りの計5つのインジケーターで表示するので、より細かなレベル調整が可能です。


フロント右側です。
OUTPUTツマミと録音ボリュームが配置され、録音ボリュームはAKAIのadresユニットと同じような1連2軸ながら左右別々に調整しやすい形状となっています。
尤も、ボリュームがやや堅いので、左右別々の調整はあまりスムーズではありません。


今は亡きANRSロゴです。
ドルビーロゴを下に配置するあたり、ビクターのプライドでしょうか。(笑)


背面です。
この辺は入出力ピンジャックがあるだけで、特に目新しいことはありません。


機種銘板です。
USパテント番号が記載されています。
50Hzと60Hzの両方の消費電力を表記するのも珍しいです。


NR-50内部です。
実質的に4方式を内蔵するとはいえ、集積度は思ったほど高くありません。


ANRS/Super ANRS 専用ICです。


ドルビーロゴが印刷されていることから、ドルビーB/C用ICと思われます。


1981年6月発行のNR-50カタログです。
一般的にどのNRカタログも、クリアなイメージを想像させるコピーを使うものですね。


当時のカセットデッキ(DDシリーズ、画像はDD-7)と並べてみたところです。
ビクター伝統の右カセットホルダのデザインに合わせた様子がよく分かります。
この頃のビクター社製カセットデッキはまだANRSが採用されており、ドルビーは未搭載でした。

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